平安から鎌倉にかけての激動の時代に、京の裕福な暮らしを捨てて、郊外の山中で小屋暮らしをすることになったのは、
方丈記の著者、鴨長明。
彼が山中で暮らした草庵、「方丈庵」の復元モデルが、京都の糺の森のなか、河合神社にあります。(?)
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この方丈庵、ほんとうに一丈四方(3m x 3m)、5畳半ほどの広さで、
それがなんと解体式、移動式だったというのは驚きです。
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50歳頃に出家してから京都の郊外を転々と放浪していた鴨長明、まさかおうちごと放浪してはったとは知りませんでした。
今で言うところのトレーラーハウスのようですね。
ん? モバイルハウス? 色々あってわかりませんね。
トレーラーハウスやモバイルハウスは車と住居が合体したものっぽいですが、方丈庵は、
2回目言います。 解体式。
解体して、手押し車に乗せて移動して、移動先の土地でまた地面に組み立てるというのが大きな違い。
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そして、草庵のなかは住処というよりは、趣味の小屋?
仏教の修行する、楽器を奏でる、和歌を詠む、そして眠るための最小限のスペース。
誰もが子供の頃に夢見る秘密基地っぽさがあります。
大人のツリーハウスみたいですね。またハウスでてきた。
ツリーハウスって普通は快適な母屋があってこそ楽しめるものですが、
出家してからの彼にはこのツリーハウスが唯一の母屋です。
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そして寒さ、暑さをしのぐ工夫よりも、解体しやすさ、組み立てやすさを重視したり、
琵琶や琴を収納するスペースをちゃんと造ったり、彼のなかでの大切なものの順位がとてもわかりやすいおうち。
芸術家のステレオタイプって感じですね。 勝手なイメージですけど。
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「こう生きたい」という理想があっても、それがいわゆる一般常識からずれていると、実行できる人は昔も今も一握り。
誰の目も気にせず、自分の価値観だけで生きるというのはラクではあるけど不安もある。
やってのけた彼はあっぱれです。
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移動する先々で自然の恵みに触れ、四季の移り変わりを五感で感じ、素朴な食に感謝して、趣味に没頭する。
ここに、広さや豪華な装飾などでは測れない豊かさを見出していたのでしょう。
わたしが最後まで手元に残すのは何だろう?
考えさせられます。
ところで、わたしが河合神社を訪れたときなんと、
方丈庵は解体、撤去されておりました!!
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折角行ったのでちょっと足をのばして、
大黒屋さんの鍵餅を買いにいきます。
昔から続くこのお店には私の大好きなキーワード、
“簡素さのなかにみる豊かさ”が滲み出ています。
鍵餅のとてもシンプルな羽二重とこしあん、飾り気のなさも素敵です。
お汁粉がケースに並ぶさま、愛おしいです。
こしあんを丁寧につつんであって、店主の愛情を感じます。
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こちらもお汁粉を椀に割り入れるとき自然と丁寧になります。
至福のひととき。