旅先のホテルでチェックインを済ませて初めてお部屋についてまず見るのってなんでしょう?
窓の外ではないでしょうか?
景色でお部屋を選ぶかたもおられるし、やはり大事なポイントのひとつですよね。
街なかにあるたま靑のちいさなお部屋には、借景や眺望はありませんが、中庭の緑でちいさな自然を身近に感じてもらえると嬉しいです。^^;
お宿には素晴らしい眺望があるところがたくさんありますが、お寺や庭園なんかもそうですね。
上手に外の景色をとりこんだ庭園では、島根県の足立美術館なんかが有名です。
京都では例えば天龍寺や無鄰菴。
それぞれ小倉山や嵐山、東山の借景を見事に取り込んだお庭があります。
そんな中、京都のお庭で借景を語るときに外せないのは圓通寺。
京都の北の奥、岩倉にある、とても小さなお寺です。
乱暴で短絡的な都市化が進んでしまった京都で、人工物が一切入らない比叡山の絵画的な借景を守れたのは奇跡的です。
縁側から見る比叡山、数歩下がった座敷から見る比叡山は、印象が異なり面白いです。
まっすぐに伸びる数本の杉の木が比叡山の景色を縦に区切るので全景が臨めないのですが、そこに奥ゆかしい芸術性を感じます。
お座敷の高さ、書院の柱、生垣の高さ、生垣の手前の杉、向こうの杉などの視覚的な作用の妙で、知れば知るほど「へぇ~!」
大きな額縁の絵を観るようです。
ちなみにこちらのお寺はその昔、修学院離宮が出来る前は後水尾天皇の山荘でした。
その後禅寺になったので、建築物としては宗教色が比較的薄い印象です。
周りはのどかな住宅街で、最寄の電車や地下鉄の駅から20分ほど歩きます。
他に目立った観光スポットもないので、みな、この景色のために訪れるのでしょう。
知る人が、知りたい人だけが、わざわざ行くお寺の一つです。
また、20分歩いたところにある鰻屋さんの素晴らしいお屋敷で鰻をいただくのは心躍る秘かな愉しみ。